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『家守綺譚』/梨木香歩 ★★★★★ それはついこの間、ほんの百年前の物語。 死んだはずの親友の家を預かることになった物書き綿貫征四郎。 そこで綿貫のまわりでは庭の植物に惚れられたり、掛軸から親友が出てきたり、飼い犬が河童とサギを仲裁したりと、あちらとこちらの世界の交流が普通であるのである。 明治末の、文明開化にあぐねている田舎でのお話。 本の装丁といい、語り口といい、全体の雰囲気といい、すばらしく内容とかみ合った本です。 こんな生活がたった百年前の生活だといたら、今の世の中がなんだか悲しくなりますね。こういったあちらの世界が入り込む隙間がない。 短編で綴られているのですが、各話の題が植物の名前です。この本には実に多くの植物がでてきます。とくにサルスベリはお気に入り。だって人に恋しちゃうのですよ?そしてその意思表示がなんともかわいらしい。綿貫と高堂の掛け合いもよろしい。庭の描写も好きです。本の中の時間の経過としては約一年。四季のうつろいがとても美しく描かれています。ああ、なんて日本的。と、日本人も思うのではないでしょうか? |
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『なんて素敵にジャパネスクA』/氷室冴子 ★★★★★ あの鷹男の帝からの、三日にあげぬ宮中へのお招き―でも、高彬という立派な(?)許婚のあるあたし(瑠璃姫)だもの、”持病の瘧”にかこつけて断っていたわけよ。とうとう帝の攻勢に耐えきれなくなったあたしは最後の切り札と、尼寺へ駆け込んでやったの。ところがその夜、うちの三条邸が何者かの放火によって焼け落ちてしまった―そして、事件の陰には妖しくも美しい鬼の姿が・・・ (本著カバーより) ジャパネスク@の補足編といったところでしょうか、しかし2巻は名作だと思います! 初っ端から帝からラブレターやらお誘いがありますが、このお話は帝との恋を描く話じゃないんですよ!!そんなの突っぱねてしまえ!瑠璃姫かっこいい!いい女だ!! まあなんといいますか、この巻はいわゆる瑠璃姫の初恋の君、吉野の君が出てくるわけなんですが、この吉野の君が泣かせること泣かせること。実は帝の次男、鷹男の弟だったわけなのです。1巻と、そして明かされる彼の過去をつなげて見ますと、彼の身を思うあまりに涙が…。ちょっとした冠位が欲しかっただけなのにね。 冠位も自由も帝にとられて、惚れた姫までは渡せない。渡させないで…とかいう下り(うろ覚え)がなけるぜ。 こういう時代だったっていうのはわかってるんだけど、どうしても割り切れないですよ。鷹男の母と吉野の君の母が姉妹で、しかも吉野の君の母とは単なる浮気で子供できちゃったわけでしょう?でも帝がなーんにも責められず、悩むのは女ばかり。ふざけんなーっ!こういう宮廷もののいざこざの原因ってだいたい帝の浮気が原因なんじゃー!! |
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『英国アンティーク夢譚』/佐々木ひとみ ★★★★★ ルポライターの仕事先、田舎のアンティークショップの店長にインタビューをしに行った麻美。しかしそこの店長はつっけんどんなお人柄。そこで麻美は思い切って質問する。「アンティークのお店を持ちたいのですが…」と。 いろんなものが「見えてしまう」麻美とボディガードの亮平が、アンティーク修行先のイギリスで出会うモノたちの物語。時を超え、モノが語りだす短編四作。 アンティークの魅力とは、手に取り、時を超えてモノたちが駆け抜けていった歴史に思いを馳せることだ、見たいな事が作中に書かれていたと思うのですが、正にその通り!アンティークは奥が深いよ…。 ここに登場するのはいずれもいわくつきのものばかり。昔から人はさまざまなものに情熱と想いを寄せていたんですね! ・マーメイドレース ・ディアレスト ディアレストの指輪、貰ってみたい〜!なんとゴージャスなんでしょう!そしてシャレているではありませんか。これはやはり貴族だからできることなのか… ・ ・アンティークボタン 一番好きなお話です。英国紳士、ブラウン氏に萌え…。 (ネタバレつき既読の方だけ) 「イギリスではね、家族の思い出の服を処分するとき、ボタンをはずして残す習慣があるんだ。そして親から子へ、子から孫へと、思い出がいっぱい詰まったボタンが受け継がれていく。だから、アンティーク・ボタンを集めるということは、思い出を集めるということでもあるんだよ」 このセリフ、最高じゃございませんか? 各話にちゃんとアンティークの背景や説明もしてあり、それを読むだけでヨーロッパの彼方に想いを馳せることができます!全体的に読みやすい文章ですので、サラっと読めると思います。お奨めです。 |
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『なんて素敵にジャパネスク』/氷室冴子 ★★★ あたし、大納言藤原忠宗女瑠璃姫、十六歳。初恋の人、吉野君との清らかな思い出に殉じて、生涯独身で過ごそうと決心しているの。だから、世間体を気にして、うるさく結婚を勧めるとうさまとは、毎日のように大喧嘩よ。そんなある夜、とうさまの陰謀で、権少将が夜這いをかけてきた。『強行突破の既成事実』で結婚させられるなんて、ああ、絶体絶命よ!! (本著カバーより) 平安時代を痛快に砕いて純愛ででも宮廷恋愛の入った感じで面白いです。 主人公・瑠璃の一人称で語られるのですが、わかりやすくカタカナのオンパレードです。わかり易いです。かといって全て現代風かといいますと、そうではなく風俗はまるきり平安時代であります。 しかし瑠璃姫は現代にもってしても充分お転婆。それを奥ゆかしいことが美徳の平安時代にもっていきますともう。ハチャメチャでございます。 そしてそんな瑠璃姫に思いを寄せる高彬の不憫な…。右大臣のご子息なのにねぇ。 ストーリーは左大臣の陰謀に巻き込まれていきます!! |
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『プラチナ・ビーズ』/五條瑛 ★★★★ 人的情報収集活動のプロである葉山は、ある日事情聴取した「対象者」の言葉の中にひっかかりを覚える。北朝鮮で何か新しい動きが始まったのではないか? 在日米軍の支援を受ける情報組織、通称<会社>の上司<エディ>の指示で、葉山は調査に乗り出す。 同じ頃、脱走した米兵の惨殺したいが発見される。 日系アメリカ人である横須賀基地NISC(海軍調査軍)勤務の坂下も、同じく調査を開始する。 彼らの聞き取り調査の中に、何度も顔を出す謎の男。 北朝鮮の有力者と対等に話し、ブランド品をさりげなく着こなす長身の優雅な男。彼の正体は? そして、謎の言葉「プラチナ・ビーズ」とは? 日本をターゲットに水面下で展開している大がかりな作戦の全貌が、葉山の前に次第に明らかになっていく。 米ソ冷戦構造崩壊後の、迷走する北朝鮮とアメリカの諜報戦争を軸に、否応なくそれに巻き込まれていく人間の人生模様。そして国家とは、祖国とは一体何なのか。 (本著カバーより) ―「祖国はもう、私の胸の中にしか存在しない」 日本人にとってはとっても痛い話です…。 この作品のどこがどうとかとかじゃなくて、純粋に、「日本って大丈夫なの!?」と思わず声に出して叫びたくなるような話です。 この作品に強く込められたメッセージとして、祖国、国ってものをすごくよく考えさせられます。 舞台は確かに日本なのですが、日本ってあたりはあまり重要ではないお話です。なんたって、ここに登場する主要人物達は、日本を見限っていますからね…! 個性的(魅力的!)な登場人物がたくさんでてきますが、一般読者の心理として一番近いのは葉山でしょうか。物語の主要人物でいながら優柔不断で、日本が好きなのに嫌い、というあたりが。かれもまた複雑な生い立ちです。諜報員として汚い国の側面とかみちゃって嫌いになりかけるんだけど、自分のことを心から思ってくれるような人たちがいて、やっぱり嫌いになれなくて。歯がゆいよ〜!! 謎の男こと、サーシャですが、彼はもう最初から最後まで鮮やかですね。 ぶっちゃけ、作戦とやらはたいしたことないのですが、そこに賭ける執念がすごい! 祖国。国って何なんだ。 |
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『The MANZAI』/あさのあつこ ★★★★ 湊市立湊第三中学に転校して一ヶ月の瀬田歩はは図体のでかい秋本貴史に呼び出された。殴られるのかという不安とともに駐輪所にいくとそこで「なんと歩は秋本から『おつきあい』を申し込まれた!? 「経験は、これからや。ふたりでコンビ組んで、やろう。大丈夫、おれもおまえも才能あるて」 (中略) 「だから、なんのコンビだよ」 「なにって、漫才に決まってるやん。さっきから言うてるやろ」 漫才の相方に選ばれた歩。文化祭で『ロミオとジュリエット』を漫才ですることになった歩。どうしてジュリエットなんだtp悩む歩。 いろいろ細かいことはすっとばして、青春真っ盛りの中学生たちです。 どうしてこの人って、この年頃の子供たち書くのがこんなにうまいんでしょうか!? 漫才にかける二人(むしろ一人・笑)の友情がよいよ!楽しいばかりの話かと思いきや、深いところもやはりあり、歩や秋本などの登場人物たちの生い立ちだとかがとてもシリアスです。 そうだよ、中学生だっていろいろたくさん考えてるし感じているんだよ!!?考えたくもない現実があったって、学校で、仲間と笑いあって乗り越えていくんだ! といった感じに勢いづいています。 子供の視点から見た話といっても、暮らしている世界は大人と同じなので、交差してくる部分もあるのですが、このときの大人と子供の受け止め方の違いって、悲しいほどちがいますよね。 ―どこでそんなに笑ったんだよ。おまえ、あしたもだいじょうぶ、これで生きていけるって、そう思わなければいけないほど、つらいことあったのかよ。それ、どんなことだよ。 |
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『緑の我が家』/小野不由美 ★★★☆ 浩志は、父親の再婚をきっかけに家を出た。 壁に囲まれた路地を入り、「緑の扉」を開いた浩志を迎えたのは、高校生の一人暮らしには充分な広さの部屋と、不可解な出来事。無言電話、奇妙な落書き、謎の手紙 etc. そして「出ていったほうがいいよ」と呟く和泉少年の言葉が意味するものは…。 嫌がらせ?それとも、死への誘い!? ―怖い―。しかし浩志の家は、もはやここしまない!息もつかせぬ本格ホラー。 (本書カバーより) 怖っ! 一人暮らしでこれ読むなんて、私バカだったかも! さすが小野不由美主上。綿密で迫りくる迫力はさすがでした。 高校生で一人暮らしなんて、願ったり叶ったり、と意気込む所ですが、初っ端から出鼻をくじかれ、幸先は悪いです。 チョークで落書きする子供(怖!)や義母からの手紙は封を切られていたり。 浩志よ、大丈夫か!? そしてその日はやってくる…。 ホラーですが、最終的には友情、かな?最後はやっぱり切なかったです。 |
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『いつかマのつく夕暮れに!』/喬林知 ★★ 捕まっちゃって大ピーンチ!なおれ・渋谷有利(職業:魔王)は、何かの手違いでこっちに流された親友の村田健と一緒に、魔族と敵対する人間たちの国シマロンで横断するくとになってしまった!頼みの綱の臣下たちはといえば、王佐(ギャンター)がおキク人形と雪男に分離し、長男は赤のアニシナに振り回され、三男は婚約者(おれ)を捜して三千里、それから次男は…きっと絶対どこかで生きていているはずで…。 痛快ファンタジー、怒涛の急展開! (本著カバー) 本筋も、違うところでもいろいろ急展開さいています。 有利サイドは相変わらず移動。三男も移動。 キーワードはやさぐれです。(萌笑ー!!)長男は…、うんガンバ! |
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『閣下とマのつくトサ日記!?』/喬林知 ★★★ 魔王ユーリ陛下に超絶熱烈忠誠(ぞっこんラブ)を誓う王佐・ギュンター閣下。彼が妄想の暴走にまかせて書きためた「陛下ラブラブ日記」の評判が口コミで広がり、ついに眞魔国の出版社が本にしたいと申し入れてきた!敏腕編集者の求めに応じ、日記からめぼしいネタを拾ううちに、陛下と三男のこんな話や、長男と赤い悪魔のそんな話、ついには次男のあんな過去まで飛び出して…? 抱腹絶倒ハイテンション・ファンタジー、捨て身の特別編! (本著カバーより) 美形なのに、ギュンターって…。 ぶっちゃけいろいろパロっていることで有名なこのマシリーズ。今回のタイトルなんて、日本のあの古典文学を!?なんて思っている方!大丈夫。ちゃんとオチつきです。日本人でないと通じないあの作品この作品の片鱗がチラリ、のまさに捨て身の短編集。 ・じゃじゃクマならし 陛下と三男の話。あ、アホらしー。キワード:腰みの ・ロメオとアルジェント 長男とアニシナの話。アニシナに結婚話が持ち上がり、アニシナがそれを 長男の、次男へのちょっとした愛情から事態は悪魔な方向に。 チェック項目:P.103の挿絵 ・終わりよければすべてよし 次男の異世界放浪記。シリアスです。 |
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『伯爵と妖精 あいつは優雅な大悪党』/谷瑞恵 ★★★ リディアは、妖精が見えて、彼らと話が出来る女の子。父に会うためロンドン行きの船に乗った彼女は、突然現れた若い男に誘拐されてしまう。エドガーと名乗るその男は、自分は伯爵だと言い、彼の身分を明かすための宝剣探しをリディアに依頼する。胡散臭いと思いながらも、彼と契約してしまうリディア。 一方ちまたで凶悪な強盗事件が噂になっていた。犯人の特徴はエドガーと似ていて…!? (本著カバーより) 舞台は英国!イギリスです!と意気込んでいったところで英国くささはあまりなかったような感じです。ヴィクトリア朝といえば大英帝国も真っ盛りというのに…。 あとがきにも書いてありますが、タイトルの妖精というのはリディア嬢を比喩してるんだとか。彼女は元気でおせっかいでかわいらしくて頑張り屋で、町の人達からは避けられているという、普通のヒロインです。(妖精が見えるって言うのは普通ではないけど)そして、大悪党ことエドガーですが、金髪長身の美形でまんねん口説き口調が特徴です。その名セリフの数々はスゴイよ…。このやりとりが主です。 おっと、わすれてはいけないのが猫型妖精(ヒドイ)のニコ。挿絵で見る限るすごい美形!しかも照会文では紳士を気取ってるってどんな猫ー!!(頬擦り)二本足で直立歩行とかしちゃってんもー!!(すりすり) 妖精、というからには妖精が関係する話です。エドガーが何の伯爵かって言うと、妖精の世界に領地を持つという伝説の青の騎士。妖精に領地をもつなんて、イギリスだとありそうな伝説ですね。青の騎士だとか、ノブリス・オブリエなど、西洋らしさがぷんぷんしあすね。興味のあるかたは調べてみてはいかがでしょう。 まだ全てを解消しきれてないような印象をうけますが、すっきりまとまっているのではないのでしょうか。続きがあれば期待。 |
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目をつぶって五十数えるんだ。 途中で「、こっそり目をあけてみろ! 命はないと思え! レイブンヒルの町を騒がせている、強盗・つかみやジャック。彼の犯行手口はいつもコレだ。 この事件に、どうしてかティーン・パワーのメンバーが関わることになる! 今回の依頼は手品店の手伝いと悪ガキの子守。これがまた曲者で… ティーン・パワー二作目。 今回の主役はのっぽで内気でファニーなトム。 ひそかにリッチェルにひかれている(美人に弱いんだ)という、中学生まっさかりな彼。でも母の再婚相手とはうまくいってないし、気もそぞろでちょっと問題点ありかな、ってなかんじの彼です。 そして、シドってカワカッコイイぞ!! 今回の依頼主の一人、手品店店主、シド・フォイさんのことなのですが、昔事故にあって片目と右手を失ってしまった元天才手品師(自称)。 悲惨な事故にあったというのにシドさんったら、まるで心は少年のようなのです!! トムとの会話がなんとも心踊るもの!そしていい人さ〜(うっとり)。 シドはガジャッコという人形で腹話術をするのですが、その掛け合いも見モノね! でも、少年のような心とは裏腹に、なかなか皮肉なものもシドには潜んでいるのですよ。シドが喋ることは面白いのですが、シドが喋らせているジャッコは毒舌し放題。「片腕ないくせに」とか「昔は人をだましてお金を稼いでいた」などなど、チクっとするようなことを存分に言います。これって、シドはジャッコにこうやって喋らせることによって精神のバランスをとっているのかな、とちょっと深読みしてしまいました。 |
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