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『狐笛のかなた』/上橋菜穂子 ★★★★ 小夜はある夕方の日、犬に追われている子狐(野火)を助け、<森陰屋敷>へ逃げ込む。<森陰屋敷>で出会った少年・小春丸。子狐の一件で知り合った小夜と小春丸は夜、一緒に遊ぶようになる。そして、二人の楽しそうな様子を、木陰からそっと眺めている野火がいた…。 出生の秘密に翻弄される少女・小夜と、幼い日に助けられた霊狐で使い魔の野火の物語。 野火ー!野火が健気でまっすぐでかわいすぎるよ!野火に始まり野火に終るお話でした…。 日本の戦国時代を思わせる世界背景と、それに呪術などが存在するというファンタジックな要素も盛り込んであります。野火は領主達がお抱えする呪術者の使い魔で、小夜サイドとは敵対しており、これがまた泣かせるのですよ…(涙)。 でも野火はひたすら一途。主に逆らっては生きていけないというのに、小夜を守るため命令に背いてしまう!! 小春丸はチビ小春丸がかわいらしかったです。天真爛漫でよいです。 最後、なにがどうなってそうなったのか、もう少し説明が欲しかったのですが、野火が笑っているならそれでいいです! 泣きたいようなよろこびが胸にあふれて、小春丸は小夜へ、手をたかくあげてふった。 読者の想いをあらわしたかのような一文で、胸が熱くなりました。 |
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『今度はマのつく最終兵器』/喬林知 ★★★ このたびうっかり魔王にしゅうにんしちゃったおれ、渋谷有利。 こっちの世界に戻って安心したのも束の間、ふたたび素っ裸で銭湯から異世界へGO!しちゃったおれは、魔王のステイタスを上げる最終兵器(リーサル・ウェポン)―魔剣モルギフを探す旅に出るハメに。名付け親のコンラッド、婚約者のヴォルフラム(82歳・♂)と一緒に優雅な船旅に…なるわきゃねーだろ!どーするよ、おい!! 抱腹絶倒のハイテンション・ファンタジー! (本著カバーより) 「最終兵器(リーサル・ウェポン)!メルギブだな!?」 「いいえ、陛下、モルギフです」 この会話が話の全てを語っているといっても過言じゃないと、私は思っているのよ。 しかし、もちろんそれだけじゃないわ!ギュンターのアレな日記とかグウェンダルの城での占いの所業とか猫はめえめえとかグウェンダルの精神統一とか「これは、くまちゃんだ」とか、ありがとう、盛りだくさんです! 地の文までテンション高くてあら大変。(必死笑) ギュンターのあれってなんていうのでしょうか…。忠誠?恋?腐女子?これからまたどんな壊れっぷりをしていただけるのでしょうか。とっても楽しみ☆ 深刻な部分も出てくるんだけどそれどころじゃなくおかしいのでちょっと見落としがち。でもすごく大切なことです。課題は山盛りですが、「日本人的DNAと、新米魔王魂」、頑張っていただきたい。 今度はどんなワープをかましてくれるのかな〜♪ |
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『今日からマのつく自由業!』/喬林知 ★★★ 正義感と負けん気が人一倍「つよいおれ、渋谷有利・15歳。ある日ヤンキー高校生にからまれたメガネくんを助けて返り討ちに遭い、公園のトイレに連れ込まれたすえに便器に顔を―と思ったら、ナゼかいきなり水流にのまれ、欧風異世界にたどりついてしまった!おまけにそーゆーわけか、その住人たちの様子がおかしい。なんなの、その冷たい目は!? 抱腹絶倒のハイテンション・ファンタジー、只今参上! (本著カバーより) 私にはそれなりに衝撃でした。なんたって、主人公・渋谷有利が、いきなり便所に流され異世界に…!!これまでこんなに憐れなワープをかました主人公がいたでしょうか!?(反語) 本のストーリー的には正直まだあんまりなじみきれてないのですが、とにかく笑いがあることはわかった。このハイ・テンション!ぶっとびぶっとび雨霰な勢いです。 異世界では「これでもか!」という美形さんたちに出会うのですが…。 ・ギュンター 王佐。教育係。友人に話を聞く限りはこの作品一番の注目キャラなのだとか。呼んでみるとなるほど確かに☆ 彼には腐女子の血が流れていますね。真眞国一の美貌の持ち主でありながら、その内容のヘタレっぷりがなんともス・テ・キ。なんかもう妄想あらんかぎりです。 ・グウェンダル 以下二人の異父兄弟の長男。BGMはゴッドファーザーのテーマと書いてあったのからみて、結構な美丈夫らしい。図体といい性格といい、好みです。(そうか)私の希望はワイルドダンディとクールビューティーの中間あたりが彼です。もう少しお年を召せばそれはもうアル・パチーノにもまけないダンディくんに… ・コンラッド 次男。有利の名付け親。剣豪。むっちゃイイ人!まともな人!!いつもにこにこ穏やかが売り。有利とは野球つながりの面も。ヒモパンよりは庶民的な下着を着用しているらしい(メモ)。 ・ヴォルフラム 三男。金髪、小柄、美少年。プライドが高くわがままの坊ちゃん。話の途中、有利に求婚(笑)され思わず頬を染めるあたりはまるで少女そのものでした。きっと意地っ張りで恥ずかしがりで、でもじつは優しい心の持ち主なのでしょう…。と書くと昔の少女小説の主人公みたいだ。いかん。 異世界から呼び出された有利(そういえば有利の紹介はどうした)はいきなり勇者でも伝説の英雄でもなく、魔王だったということが判明。魔王に就任するかしないかで一騒動。 ギャグの嵐でも、話の根本のテーマは結構シリアスで、種族間の抗争とか戦争などを考える面も見られます。戦争反対、と声を大にして宣言してくれるあたり、有利は日本男児であります!! |
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『彩雲国物語 ―はじまりの風は紅く―』/雪乃紗衣 ★★★ 感想っていうか、話の内容は上の通りです。オイシイね〜。 秀麗と王様のほかにも捨てがたいキャラがたくさん登場します。方向音痴の文官とか、とっても色男の武官とか、嫁ぐならこの人の所bPの家人とか。あとおじいちゃんズ(どんなまとめ方だ)の陰謀のやり取りなども注目。 王様の犬っぷりが大変魅力的。「大発見だ」発言は久々にヒットしました。 続編あるといいいな。 |
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『王子様は犬!』/深森塔子 ★★★☆ なんてオイシくてツボな設定なんだ。 一年間飼ってきた飼い犬が実は犬。しかもお約束どおり「お手!」に反応してくれます!どんなに金髪で美形で王子(王子なんです)でクールで無愛想などこから引っ張り出してきたんだ的完璧の彼でも、勇気にとっては飼い犬以上にあらず! 主人公・勇気も格闘好きの少年のような女の子だし、いろーんな意味で妄想しやすくてこれからが楽しみな二人でしょう?(萌えるね!) さて、話の筋は、ルーエリンのいる異世界でトラブルがあって…、です。 なんかもう話よりキャラのすったもんだ喜劇のほうが見ものです。 |
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『だって、買っちゃったんだもん!』/中村うさぎ ★★★☆ 毎度毎度性懲りもなく無駄遣いしては借金を重ね、ついに残高九十八円!? それでも懲りずにイギリスに豪華海外旅行したり、ブランドの受注会に突っ走ったり、そうかとおもえば不動産購入熱に冒されたり…。 放蕩三昧に暮らす毎日、気づけばまたもむじんくんの前。毎日が倒産寸前状態!果たして財政破綻はまぬがっられるのか? 切れ味抜群、一読必笑エッセイ。 (本著カバーより) んにゃあ!オモロイ(笑)! 作者の人生体験を赤裸々に晒しまくってるこのエッセイ…。中村うさぎさんの人生、そのものがネタなのですね…。 お金もないのに無駄遣い。わかっちゃいるけど買ってしまう。私だったら絶対に足を踏み入れない領域まで行ってしまうからこそ目が話せなくて面白い。そして大いに金策に悩むのです!!その姿、潔さはアッパレとしか言いようがありませんね。 主にイギリス旅行と有名ブランドの受注会、不動産騒ぎと金策(←これ大事)の話です。そこでの中村うさぎっぷりをとくとご覧あれ。 |
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| 『GOTH―リスカット事件―』/乙一 ★★ 建築様式とはあまり関係ない それは文化でありファッションでありスタイルだ 人間を処刑する道具や拷問の方法を知りたがり殺人者の心を覗ききむもの 人間の暗黒部分に惹かれるものたちがGOTHとよばれる 僕と クラスメートの森野夜がそうだ (本著カバーより) 猟奇的な事件に強い関心を抱いているという共通点を持つ「僕」とクラスメイトの森野。二人が周りで起こる異常な事件に関わっていく6作品からなる短編連作。 夜中、布団の中でスタンドライトという組み合わせで読んでしまった私はとんでもなく怖い思いをしてしまったよ。 たんたんとあるがままを描写してあるのにたまにサラッとんでもない言葉が書いてあったりと、とてもスリリングでした…。そこが乙一氏の魅力なのでしょうがね。 さて、この「僕」と森野。この二人の関係はなかなか興味深い。友人ではない。恋でもない。一般的に言ういい人でもない。最後まで読んだ感想としては、森野は「僕」の犠牲者なんじゃないかな。妹もそうだが、彼女たちの周りにいることによって、「僕」の「GOTH」である部分がネタに事欠くことはないのだから。 毎回でてくる異常者たちも見ものである。これは極端ではあるが、誰かの意識の中に眠っているかもしれない、という半端な身近さが感じられて恐怖心をそそる。 ・暗黒系 森野が連続誘拐殺人の犯人のものと思われる手帳を拾ったことからはじまり、事件の全貌に至る。 ・リスカット事件 手首を切断して持ち去るという事件の犯人と、「僕」と森野が微妙に絡まっている話。「僕」が森野を意識し始めた話らしい。(意識といっても、甘い期待はしないように) ・犬 ・記憶 森野の生い立ちに関わる話。 ・土 生きたまま棺おけに閉じ込め、その棺おけを土に埋める男の話。 ・声 怖い中にも、「くすり」と笑わせてくれる微笑ましいエピソードがあるなと思っていると、見事にそれを打ち砕かれたりと、なかなかなサスペンス。 |
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| 『銀河英雄伝説@黎明篇』/田中芳樹 ★★☆ 宇宙暦八世紀、人類は宇宙において三つの勢力にわかれていた。帝国と、それに反旗をひるがえす同盟と、その両者の中間にある貿易国家のフェザーンとにである。微妙なバランスを保っていた三者の勢力が、帝国に出現した天才軍略家ラインハルトによって、いまくずされようとしていた。彼は二万隻の船隊を率いて遠征の途に上がったが、それを迎える同盟軍のなかに彼の終生のライバルとなるヤン・ウェンリーがいた。ふたりはアスターテにおいてはじめてその智謀をきそうが…。 (本著紹介より) 「私はぜんたい、流した血の量に値するだけの何かをやれるんだろうか」 艦隊モノといいますか、スペース・オペラといいますか。 帝国側は中世ヨーロッパの貴族社会を、同盟側は民主主義国家を彷彿とさせます(実際そうなんだが)。 帝国軍元帥にまで上り詰め、金髪に青い目(アイス・ブルー)、美形・二十歳で成り上がり貴族、そして姉と副官のキルヒアイスだけに見せるその笑顔に注目のラインハルト。 本当は歴史研究家志望なのに転がるに転がってただ今同盟軍昇進街道まっしぐら、飄々とした性格のヤン・ウェンリー。 この、どうにもかみ合わない二人が何の因果か己の智謀を巡らせ競い合う! 黎明篇では<アスターテ会戦>と<アムリッツァ会戦>で戦う。 二人の戦いの他にも、帝国と同盟、二つの社会の違いと、二人をとりまく人間関係にも注目! 物語はいろんなものを巻き込んでうごめいています。シンプルになれない。 私は、特に同盟軍は近年の日本を見ているみたいだと思ってしまった。 「貴官の勇戦に敬意を表す、再戦の日まで壮健なれ」 ――ラインハルト 「今度会ったら叩きつぶしてやる、ということだな」 ――ヤン・ウェンリー |
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| 『戦場のネメシス』/須賀しのぶ ★★★☆ キャッスルの部隊に沼ネズミ(スワンプ・ワット)という名の兵が入ってきた。酒におぼれ、働く気のない彼。だがある日ヒゲを剃ってから急に真面目になった。同時にキャッスルの様子が変わった。どうやら、二人は昔の知り合いらしいが・・・。 戦場に生き、誰にも弱さを見せないキャッスルの、悲しい過去とは? (本著紹介より) そして、痛いほど思い知った。 自分はもう彼女にとって裁く価値もないのだと。 せ、切ねー!! 戦場とは多くの人の命を左右してしまうんですね…。 キル・ゾーンシリーズの第二作目。 一作目のノリを残しつつも、キャッスルとスワンプ・ラットとの関係がわかるにつれて、なんともやるせないことになってしまいます。 その関係、というのは作品を読んでいただくとして、今回の注目はシドー君でしたが(ラファエルはどうした)、すっごい切なかったのはスワンプ・ラットです。 そしてそれ以上に共感したのはキャッスル。 強くなりたい。そして自分は強い人間だと信じているのに、小さなことでそれが崩れてしまう、うすっぺらな強さ。わかる気がします。昔、小さかったころは「大人だ」と思っていた年齢になったというのに、ちっとも成長していない。そんな自分が歯がゆくてたまらない様子が痛々しく現れています。・・・周りは前作どおり、アホですが(笑)。 え、エイゼンとキャッスルの意味深な会話に興奮してください。(どきどき) 激しくネタバレ↓ それにしても、この本の、人が死ぬシーン、文章ウマすぎです。なんていうか、とっても私泣かせです。美しすぎる文章です!なああ、ケヴィンー!! でも、彼、実はラファエルのせいで死んだといっても過言じゃないと思うのですが。せっかく持ち直したのに、最後あっぱれすぎるほどあっけない。 ―そして最後の瞬間に誰かのことを思いながら逝けるなら、それはきっとこのうえなく幸福なことなんだろう。 |
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| 『キル・ゾーン ジャングル戦線異常あり』/須賀しのぶ ★★★☆ 23世紀の地球は治安部隊(月面都市支援の政府軍)対レジスタンス(地球全土の反乱勢力)の大内乱時代をむかえていた。 そんな中、治安部隊の小隊長・キャッスルは激戦地ボルネオで、勇敢に戦っている。ある日、敵にとらえられた仲間を救出に行きたいと上官に申し出るキャッスル。しかし、助っ人として新しく入隊してきたのは、とんでもない不良ばかりだった! 迫力の戦闘シーンが冴える、近未来バトル。 (本著紹介文より) コバルト文庫で軍隊モノ・サバイバルをやってのけてしまう須賀しのぶ先生のキル・ゾーンの登場です。キル・ゾーンシリーズ第一巻目、ということで、キャラや世界設定の紹介という面が出ていたのではないでしょうか。 情が厚く、でも女鬼曹長のキャッスル。金髪に紫の瞳のナイスルッキンで女グセが悪いエイゼン。いつでもいい嫁さんになる準備は大丈夫!なアブドゥル(男)。新米兵のヤンチャ坊主のラファエル。無口で日本人のシドー(本名は志道明くんです!漢字表記をするととっても親近感!)。 キャラの特徴をよく表している発言と、テンポのいい会話、そして戦場という生と死のギリギリのラインでいきているという現実をスゴ味のある文章で描いている、というギャップが魅力。 |